ワンダーランド一○一一○

 

 

 

1.

ワンダーランド は、

「まぼろし」「フィクション」「不思議な世界」「仮想世界」などの意。

一○一一○(10110) は、

エラーコードで「データはこれ以上存在しない」の意。

 

2.

20世紀後半に発明された〈インターネットの世界〉は、その後の急速なインフラ整備とパ ソコンや携帯などの端末の低価格化によってゼロ年代に世界的に普及しました。2010 年代に入り、スマートフォンやiPadなど、いつでもどこでも誰とでも「つながる」ことが できるデバイスが登場し、Twitterやfacebookなどのソーシャル・ネットワーク・サービ ス、youtubeやニコニコ動画などの動画共有サイトなどが市民権を得ることで、情報と の接し方、ヒト・モノ・コトとのコミュニケーションの方法は大きな変貌を遂げました。こうし た変化は旧来の血縁・地縁・学校・職場・趣味などの現実世界における多重な「つながり」 に深みと広がりを与えるだけでなく、個人の興味や関心によって、どこまでも無限に拡が っていく〈新しいネットワーク=もうひとつの世界〉をつくりだしました。この目に見えない 透明なアーキテクチャによって構築された〈もうひとつの世界〉は、今や〈もうひとつの現 実〉として、現実世界とクロスオーバーし始めています。私たちが手にしたこの〈拡張され た現実=新しいリアリティ〉は、果たして21世紀を切り拓く希望となり得るのでしょうか。

本展は〈拡張現実 (AR : Augmented Reality)〉という概念や手法を手掛かりにしな がら、二つの世界を日常的に行ったり来たりするーー〈いま、ここを生きるリアリティ〉、そし て〈2010年代の想像力〉を問いかけます。会場では、ARを軸にその独特のセンスと領 域横断的な活動を通して多方面から高い注目を集める未来開発ユニット・AR三兄弟、都 市介入の空間的実践を通して、建築や都市のアイデアを押し広げることで、もうひとつの 環境をつくりだすことを試みる若手建築家ユニット・assistantによる新作を展示します。 また、著書『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)で「〈虚構の時代〉から〈拡張現実の時代〉 へ」という言葉とともに〈震災後の想像力〉を力強く提示する新進気鋭の若手評論家・宇 野常寛氏、2004年ヴェネツィア・ビエンナーレ第9回国際建築展の日本館コミッショナー を務め、「おたく:人格=空間=都市」と題した展示を企画するなど、漫画・アニメ・ゲームを 中心とした現代日本の輸出文化研究の第一人者・森川嘉一郎氏を迎え、〈拡張現実〉をテ ーマにしたトークセッションも開催致します。私たちが本企画で提示する想像力とその実 験は、いま、ここにある都市や社会の《構造》を可視化するとともに未来をも拡張させる《出来事》となるでしょう。

ぜひ、この機会に御高覧下さい。